「走る・走らす」の使い分け
主語が人であるとき、走る・走らすの自動詞と他動詞の対は、すべての態があります。この例も、送り仮名に「ら」を使う動詞ですので、意図的に例題にしました。可能形の作り方は、五段活用の動詞は已然形に「る」を付け、それ以外は「られる」を付ける違いがあります。「れる・られる」は受身を作る助動詞ですが、可能を作る助動詞の使い方があるので混乱します。自動詞「走る」の可能形は、已然形に「れる」を付けた言い方「走れれる」と言っても通じます。したがって、「走れる」を別動詞として立てて、慣用の可能の言い方は、可能動詞形を使うことにしたのです。自動詞「走る」の使役形は、機能的には他動詞の「走らす」と同じです。助動詞の「(ら)れる」は、受身と可能を作る二つの機能がありますので、「走らせ(られる)」と「走らせ(れる)の言い方が、表4.6.1と表4.6.2にあります。この混乱を避けるには、「(ら)れる」を可能態に使うことを制限した言い換えがよいでしょう。それは、文字数が増えますが、「走ることができる」「走らすことができる」です。もう一つ、「走らす」の使役形「走らさせる」を不思議な言い方であることに気が付くでしょうか? 機能としては使役の言い方がダブっています。と言うことは、ひるがえって、「走らす」の動詞を使うまでもないと決めても良いのです。同じように、「書く・書かす」「聞く・聞かす」「取る・取らす」などは、「書く」「聞く」「取る」で済ますことができます。英語には使役動詞の区分を使います。日本語では「書かす」「聞かす」「取らす」は使役の意義がありますので、使役動詞と言えなくもないのですが、可能動詞ほどには使い勝手が良くなりませんので、これらの動詞形を使わないようにすると文が判り易くなります。
表4.6.1 主語が人・自動詞・走るの場合
自動詞 |
語幹と(送り仮名) |
活用種別 |
活用形(未然・連用・終止・連体・仮定) |
|
(基本形) |
走(る) |
五段活用 |
ら、り、る、る、れ |
○ |
受身 |
走ら(れる) |
下一段活用 |
れ、れ、れる、れる、れれ、 |
○ |
使役 |
走ら(せる) |
下一段活用 |
せ、せ、せる、せる、せれ |
○ |
可能 |
走(れる) |
下一段活用 |
れ、れ、れる、れる、れれ |
○ |
使役+受身 |
走らせ(られる) |
下一段活用 |
られ、られ、られる、られる、られれ |
○ |
表4.6.2 主語が人・他動詞・走らすの場合
他動詞 |
語幹と(送り仮名) |
活用種別 |
活用形(未然・連用・終止・連体・仮定) |
|
(基本形) |
走ら(す) |
五段活用 |
さ、し、す、す、せ |
○ |
受身 |
走らさ(れる) |
下一段活用 |
れ、れ、れる、れる、れれ、 |
○ |
使役 |
走らさ(せる) |
下一段活用 |
せ、せ、せる、せる、せれ |
? |
可能 |
走らせ(れる) |
下一段活用 |
れ、れ、れる、れる、れれ |
? |
使役+受身 |
走らさせ(られる)) |
下一段活用 |
られ、られ、られる、られる、られれ |
? |
2010.4 橋梁&都市PROJECT
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