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4. 動詞の話し

4.5 「態」の違いの表し方


4.5.3 「照る・照らす」の使い分け

 文例として「朝日が照る」の自動詞を使う文と「朝日が山を照らす」の他動詞が作る文を比較して、下の表4.5.1〜表4.5.3の態の違いによる活用形を見て下さい。送り仮名に「ら」を含む動詞ですので、意図的に例題にしました。この主語の朝日は無生物です。したがって、自動詞「照る」は基本形の使い方だけしかありません。表4.5.1は、物理的に語尾変化をさせて受身・使役・可能などを表したのですが、論理的にこの態はありません。一方、「照らす」は他動詞ですので、主語に人を立てて「人が物を光で照らす」と使うことができます。ここでは主語を生物と無生物に分けたことで、使える態と使えない態の区別が出ます。無生物は意思を持ちません。他動詞の「照らす」は、途中に壁があれば、照らすことができませんので、可能態の出番があります。これが「可能動詞」の使い方です。「照る」の使役形と同じですが、主語が無生物ですので、自動詞の使役ではないことが演繹されます。「使役+受身」は、幾らかくどくなりますので、表4.5.2では「?」を付けました。「可能+使役」「可能+受身」の送り仮名構成も、物理的にこの言い方ができるにしても、意味が限定できませんので、使いません。

表4.5.1 主語が無生物・自動詞・照るの場合

自動詞

語幹と(送り仮名)

活用種別

活用形(未然・連用・終止・連体・仮定)

 

(基本形)

照(る)

五段活用

ら、り、る、る、れ

受身

照ら(れる)

下一段活用

れ、れ、れる、れる、れれ、

×

使役

照ら(せる)

下一段活用

せ、せ、せる、せる、せれ

×

可能

照(れる)

下一段活用

れ、れ、れる、れる、れれ

×

使役+受身

照らせ(られる)

下一段活用

られ、られ、られる、られる、られれ

×

可能+使役

照れ(させる)

下一段活用

させ、させ、させる、させる、させれ

×

可能+受身

照れ(られる)

下一段活用

られ、られ、られる、られる、られれ、

×

表4.5.2 主語が無生物・他動詞・照らすの場合

他動詞

語幹と(送り仮名)

活用種別

活用形(未然・連用・終止・連体・仮定)

 

(基本形)

照ら(す)

五段活用

さ、し、す、す、せ

受身

照らさ(れる)

下一段活用

れ、れ、れる、れる、れれ、

使役

照らさ(せる)

下一段活用

せ、せ、せる、せる、せれ

×

可能

照ら(せる)

下一段活用

せ、せ、せる、せる、せれ

×

表4.5.3 主語が人・他動詞・照らすの場合

他動詞

語幹と(送り仮名)

活用種別

活用形(未然・連用・終止・連体・仮定)

 

(基本形)

照ら(す)

五段活用

さ、し、す、す、せ

受身

照らさ(れる)

下一段活用

れ、れ、れる、れる、れれ、

使役

照らさ(せる)

下一段活用

せ、せ、せる、せる、せれ

可能

照ら(せる)

下一段活用

せ、せ、せる、せる、せれ

使役+受身

照らさせ(られる)

下一段活用

られ、られ、られる、られる、られれ

2010.4 橋梁&都市PROJECT

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