目次ページ  前ページ  次ページ

4. 動詞の話し

4.4 状態の違いを表す言い方


4.4.4 「態」「形」を使う用語の方が分かり易い

 日本語の動詞は、英語の文法用語voiceを訳した「態」を付けて、状態を区別する分類を使う方が普通です。能動態・受動態などの言い方です。用語としては硬いので、「形」も使わない「受身」(和製漢語で訓読みします)のように使うのが一般的です。動詞の態は、自動詞と他動詞とで機能が違ってきます。日本語は、フランス語やドイツ語にあるような、人称、性別で名詞と動詞の使い方を区別しません。実は、主語が人や動物のような生物(通常は人)であるときと、無生物であるときで言い方に違いがあります。これを便宜的に人称としておきます。無生物を主語に立てて自動詞を使うとき、論理的には、受身・使役・可能の態がありません。無生物を主語に立てて他動詞を使うとき、使役の言い方も、論理的には有りません。使役の受身形は作れます。動詞用漢字が同じであっても、自動詞と他動詞の使い分けがあるものは、別の動詞と見なければならないことがあります。自動詞の使役形が、同じ漢字を使う他動詞と紛らわしいことが問題になるのです。例えば「朝日が照る(自動詞)」と「朝日が山を照らす(他動詞)」があります。もし自動詞「照る」の使役形を作るならば「照らせる」だからです。「雨が降る(自動詞)」と「何かが雨を(人または物に)降らす(他動詞)」があります。自動詞の使役形は「降らせる」です。「茂る」は、主語に植物を考えて生物扱いをすると、使役形の「茂らせる」は、許容できる言い方としてもよいでしょう。この論理的な使い分けは、書き手や話し手の感性で決まります。聞き手や読み手が、この違いが分かることも感性に依存しています。
2010.4 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ