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3. 名詞の話し

3.3 階層的な構造で使う名詞


3.3.3 抽象名詞の理解までにも段階があること

 日本語の中での集合名詞、例えば家族は、構成の全体を指します。英語では、中身を一つ二つと数える意義で使う場合と、全体集合を単位とする何かの分類法があって、その単位で数える場合とがあります。英語の集合名詞は、単数形のままであっても、また複数の意義を持つ場合も、動詞の単数形と複数形とを使い分けます。この使い方は、話し手または書き手の生(なま)の意思と習慣を反映しますので、文法書の鵜呑みと受け売りは禁物です。例えばデータ(data)は複数形の語であって、単数形のdatumがあるのですが、動詞の単数形で受けることが普通に見られ、datumに別の定義を持たせる使い方もします。情報の語に当たる英語のinformationは不可算名詞とするのが常識です。しかし、前後の文脈から複数にしたいことがあります。これを物質名詞扱いで数えることをします。英語の水(water)は物質名詞ですので、(a cup of water)のように言うのに倣って(two pieces of information)と言えます。文法用語で言う名詞は、第一義として「実体の有る」物の名前を指す言葉、と説明があります。国文法の用語は体言です。「実体の有る」ことの説明用語に「具象」があって、和語的に読むときは「形(象)を備える(具)」と当てます。この反意が抽象です。形が有りませんので、説明が大変です。名詞の第二義として、物事の状態を表す名前をもつ抽象名詞があります。物事は「ものごと」と読ませ、漢字の物と事を当てた和製熟語です。音読みでは事物と使います。物は形が有り、事は有りません。したがって、事を指す名前を説明して、相手が同じ理解を持つようにするには、用語についての定義が必要です。また、その定義を理解する知的な、また感覚的な環境を共有する必要があります。
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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