目次ページ  前ページ  次ページ

3. 名詞の話し

3.3 階層的な構造で使う名詞


3.3.2 集合名詞の理解までには途中経過があること

 幼児は、物の名前(普通名詞の方)と固有名詞と、二つの言い方の区別が分らなくて、すべて固有名詞にして言います。「猫ちゃん」「お猿さん」と言うのがそうです。生き物だけでなく、身の回りに在る日用品にも「ちゃん」を付けることもします。日本語では丁寧な物言いに、「お」を付ける習慣があります。女性が特によく使います。子供に物を大事に扱うことを教えるとき、物にも命が宿っているような話し掛けをすることに理由付けをすることができます。幼児に知恵が付いてくると、同じ名前で複数有る普通名詞の言い方と固有名詞との区別が付いてきます。普通名詞に付ける名前の約束は定義です。「象の花子さん」と言うときの「象」が普通名詞、「花子さん」が固有名詞です。この命名の過程を宣言と言います。普通名詞は、同じ概念の物(生き物も含めます)が複数あります。英語は、単数・複数を区別する言い方ができる名詞を可算名詞(countable noun)と言い、冠詞a、複数形にするs、動詞も活用形を変える、などを使い分けます。複数の物事の集まりをまとめて言う用語があって、文法では集合名詞です。代表的な言葉にfamilyがあります。漢字の熟語は家族です。日本語(和語)の環境では、集合名詞が未発達の古い時代に漢語が輸入されましたので、「族」に当てる和語の訓読みがありません。日本語(和語)では、「父母兄弟姉妹」は訓読みで使います。しかし、兄弟の言い方は集合名詞的であって、漢語の熟語を音読みで使います。科学と言うときの科はグループに分ける意義を持つ漢字です。科学的な方法の一つが分類学であって、あらゆる分野で応用されています。その創始者であるリンネ(Linne,1707-1778)は分類学の父と言われています。動植物を大枠から細分するまでの分類では、個々の集合名詞を表す漢字は、「界・門・類・綱・目・科・属・族・種」などを付けます。これらは、いずれも和語の語彙には無かった(抽象的な)言葉です。
2010.3 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ