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3. 名詞の話し

3.2 外来語は名詞扱いとする


3.2.3 漢字を悪者扱いすることもあること

 漢字の歴史は何千年も続いていますが、時代の流れの中で悪者扱いされることも起こります。しかし、長い年月に渡って使われ、記述されてきた文字資料が継承できるようなシステムを工夫する必要があります。これは保守的な考え方ですので、革命思想に染まると攻撃の対象になります。中国の文化大革命が大きな傷を残したのは気の毒です。表音文字体系を主張する過激な漢字廃止論は、さすがに受け入れられませんでしたが、漢字の使い方を簡単にしようとする主張には、それなりの評価ができます。しかし、国が指導して規則を作るのは問題があります。その理由は、規則を決める委員会などで、委員の恣意が入ることと、弾力的な運用を許さない権威主義的な雰囲気も生まれるからです。日本では、常用漢字に無いことを理由として、専門用語に漢字かなを併用する熟語(例えば剪断をせん断、剪定をせん定とする)や、音を合わせて別の漢字に直す、などが採用されました。これは、漢字の個性的な使い方を壊しています。ワードプロセッサが無かった時代、書いてある文字は読めても、それを正しく書くにはかなりの知識が必要でした。作家がいい加減な略字を書いても、出版社や印刷所で正しい活字を選択してくれました。ただし、言葉に敏感な作家は、この干渉を嫌いました。今のワードプロセッサは、読みを知っていれば、仮名漢字変換で幾つか候補の文字を表示してくれますので、自分の判断で常用漢字にない漢字も使えるようになりました。つまり、条件は変わりますので、規則化してしまうと時代の動きに合わせる対応ができなくなります。
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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