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3. 名詞の話し

3.2 外来語は名詞扱いとする


3.2.4 カタカナ語の扱いの経緯

図3.3 小言海の見出し表紙の部分    図3.4 小言海の奥付、明治37年(1904)

 漢学を基礎においた本格的な国語の辞書は、大槻文彦(1847-1928)の言海が最初です(図3.3、図3.4)。これは語の並べ方がアイウエオ順です。庶民の向け辞書の語並びは、いろは順が普通でしたので、画期的な編集でした。そのため、索引に「いろは順」も付けてあります(図3.5)。漢字かな混じりの書き方は、日本語の中でしっかりと取り込まれています。漢字は、もともと輸入語であって名詞扱いをしていますので、漢字の位置にカタカナ語を使うことは文法規則に違反しません。このとき、不思議な表現方法も見られます。例えば、洋琴と書いておいて、振り仮名をピアノと付けるのです。書き手は、ピアノだけで済ませたいのです。そこで、洋琴と書いてピアノと読む方法を提案し、これが普及すると、めでたく和製漢字熟語として認知され、洋琴と書いてもピアノと読みます。これが、漢字が意味を伝える機能を最大限に生かした和製漢字造語の一つの作成方法です。しかし、読み手は、「ようきん」の読みより元の発音で読む方が自然ですので、文字としての洋琴を使わなくなり、カタカナ語が残ります。明治以降、多くの欧米語、特に専門用語を漢字の熟語に直して使いました。英語を知らないことが普通であったころ、この翻訳は意義がありました。戦後は、この過程が間に合わなくなったことと、英語の知識が増えましたので、カタカナ語のままで使うことが多くなりました。新村出(1876-1967)の編になる広辞苑は、元の欧米語を知らない人向けに、国語辞書にカタカナ語も含めるようになりました。広辞苑に載ったカタカタ語は、日本語として認知されたと見なすことができます。固有名詞もイラストも含めてありますので、辞書というよりも百科事典の編集です。

図3.5 言海の索引、「あいうえお」順と「いろは」順も付けてあります
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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