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3. 名詞の話し

3.2 外来語は名詞扱いとする


3.2.2 漢字を覚えるのは大仕事であること

 表音文字の仮名書きをすると字数が増えます。しかし、字の種類は少なく済みます。漢字は、画数が多いことと、書くときは文意に合わせて漢字を選び、読むときは読み方と意味の理解が必要ですので大仕事です。江戸時代の庶民の教養は「読み・書き・そろばん」でした。このうち、書きは、仮名の「いろは」が必修でしたが、それで役に立ちました。また、耳で聞いて分る言葉を使いましたので、かな書きでも用が足せました。武士階級は漢学を修めることが素養でしたので、その延長として漢字のお習字を書道として修めました。(話しを脱線させて、筆者の経験をお話します。知人が、家業を継ぐために大学を辞める、と挨拶がありました。家業は何?と尋ねたところ、お寺だとのことでした。その次があって、勉強のし直しの最初がお習字だと言われて納得しました。)漢学に原点のある音読みの熟語を混ぜた物言いは、字を眼で見ないと分りません。庶民レベルで難しい漢字の熟語を音で覚えるのは、語りを何度も繰り返して聞く演芸を通してでした。現代のラジオとテレビは、耳で聞いて分る言葉を使います。英語は、耳で聞き分ける言葉の性格を持っていますので、それをカタカナ語にして使っても元のスペルが想像できて、意味が分るからです。しかし、英語の素養が低い庶民レベルでは、迷惑な言い方です。逆に、聞いて分らない言葉の代表が、お坊さんの読むお経です。一方的な物言いであって、意味が分らなくても、聞いて有り難がる習性がここで育ったのではないかと思います。演説調の物言いは、権威付けのため、音読みの漢字熟語を並べる傾向があります。本人は得意なのでしょうが、論理的な内容が少ないと、返って教養の無さが露呈します。
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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