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2. 日本語文書の構造

2.7 作文指導法


2.7.2 言葉を反芻して修正していること

 声に出して話す言葉は、説明が不足する場合もありますし、しょっちゅう間違えます。話している本人は、気が付けば、その場で言い直しをします。昔の軍隊言葉では、「もとい」と言って言い直しました。聞いている側が理解できないとき、問い返すのが良いのですが、相手の話しの流れを中断させますので、マナーが必要です。細かな間違いをあげつらうのが、揚げ足取りです。公式の場で発言するとき、揚げ足を取られないように言葉を選ぶと、当たり障りのない話になり、いわゆる官僚の答弁調になります。対話のときは、質問と意見とを峻別しなければなりません。質問は、相手の答えを要求しますので、質問と応答とが対です。英語を略したQ and Aも見ます。意見の方は、必ずしも相手が応答することを期待しません。自己主張ですので、目立ちたがり屋に見えることがあります。匿名の投書は、一種の意見表明です。自分を隠して言葉の攻撃になることがありますので、マナーとしては褒められた方法ではありません。学術論文の覆面審査ではよく起こります。公開の学術発表の場では、年長者が知ったかぶりで、いじめに当たるような、温かみのない、一方的に意見を述べることがあります。声に出す言葉は一過性ですので、文書にして、それを書いた本人が読み返すのは、言わば反芻です。他人に見てもらうのは意見をもらうことです。修正の責任は本人が取ります。他人が書いた文書に自分で手を加え、それを断りなしに自分の文書にするのが盗用です。したがって、引用の方法にもルールがあります。組織として学術論文作成時に、参加した全員を著者名に入れることが要求された時代がありました。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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