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2. 日本語文書の構造

2.6 漢字熟語の語順


2.6.2 二ヶ国語を混ぜて使っていること

 漢字の熟語は、単独には名詞扱いですが、前の第2.4節の始めで説明したように、「する名詞」「なに名詞」の使い方があります。例えば、「運動」の熟語は、構成する漢字に動詞の意義がありますので、「運動する」と素直に使います。一方、例えば「優美」は「なに名詞」の性格がありますので、「する」を付けると意味が通りません。不思議なことに、漢字の辞書には、品詞種別の説明がありません。知り合いの中国人に尋ねたところ、漢字を品詞別に分類する習慣は無い、とのことでした。品詞分類の考え方自体、歴史が浅いことを考えれば当然のことです。日本人が、漢字個別に動詞・形容詞または副詞の種別を判断している理由は、日本語の読みに漢字を訓読みで当てる習慣が定着しているからと思います。同じ文字を使っていても、音読みと訓読みの違いは、全く別系統の言語、つまり、中国語と日本語の違いです。日本語(和語)には抽象的な意義を表す言葉がありませんので、語彙を補うには中国語の熟語を借用語として使う必要があります。しかし、読みは日本風に訛った(なまった)音読みです。日本語の文書は、読みの異なる漢字がまぜこぜに使われていますが、この不思議な構造を違和感なしに眼で読んでいます。欧米語も同じ様に日本語の中に名詞として借用しています。こちらは音を仮名で書きます。これも、元の言葉が動詞であれば「する」を付け、形容詞や副詞に使うときに「な・に」を付けた使い方をします。電子レンジを使うようになって「チンする」の言い方も出てきました。読み手が困るのは、元の欧米語の知識が無いときです。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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