目次ページ  前ページ  次ページ

2. 日本語文書の構造

2.5 語順の分解と組み立て


2.5.3 数式は英語文章の一種であること

 明治以降、欧米からの文化を輸入したとき、文字記号を使った数式表現は、日本語の環境には無かったので、そのまま、つまり借用語の扱いをしました。四則計算は商業活動では必須ですので、それを言葉で説明する言い方は、どの言語にもあります。数に代えて、文字や記号を使って計算手順を表すことが代数の原義です。日本人にとっては、代数式は、最初から特別扱いをしています。欧米人は、語を記号表現に代えたものとして、元の語に直して声に出して読み、また、それを文としても書きます。(因みに、USAのような表し方は頭字語(acronym)と言い、元の語に直して言うこともします。)数式記号も、日本語の語順と英語の語順とは向きが違います。日本語では、例えば「A足すBはC」のように言いますが、英語は「C is equal to A plus B」が普通です。これを記号化して「C=A+B」とします。割り算を言葉で言うときは、二通りの語順があります。「AをBで割ってCを得る」操作を説明する句は、「we divide A by B getting C」または「A is divided by B getting C」が普通です。ところが「we divide B into A getting C」の言い方もあるのです。AとBの語順が反対です。最後の言い方は日本人には馴染みが無いのですが、欧米ではごく普通の言い方だそうです。コンピュータ言語のCOBOLには、この二つの文があって、前置詞by(日本語の助詞で相当)とinto(に相当)で使い分けます。この違いは、直接目的語をAにするかBにするかと言うことと、それを踏まえた語順が関係しています。このように比較してみると、日本語は助詞を使うことで、語の組み立て順に影響されずに、正確な意味表現ができる便利さがあります。日本語の文は、幾つかの条件を先に並べ、最後に動詞で締めます。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

前ページ  次ページ