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2. 日本語文書の構造

2.3 語順と向き


2.3.3 文書は眼で見て先読みしていること

 声に出して話す場合、話す側も聴く側も、文字数相当の時間を取られ、端折ることができません。話すときの速さは、標準として1分間300字程度です。現代はせせこましい時代になりましたので、どこの言語でも、昔に較べて話し方の速度が上がっています。文字に書いた文書を黙読すると、速度がかなり上がります。文書によるコミュニケーション(情報伝達)は、会話時間を節約できることと、時間に束縛されないことの二つの理由で、現代の多忙な環境では重要な手段です。電話・面会・会議に代表されるような口頭でのコミュニケーションが、必要以上に時間を取られ、非能率になることがあるのは、多くの人が経験しています。文書の構成が定型的、または慣用的であると、要点の拾い読みができます。その手掛かりを与えるのが、表題(title)や見出し(caption)です。この他にも種々の技法が提案されていて、この全体が実用文書の書き方です。小説などの文芸作品を読むときは、相手を意識することなく、自分の時間ペースで楽しむことが、相手のあるコミュニケーションと違うところです。詩歌などは、何度も読み返し、朗読や歌も発声して楽しみます。探偵小説は、手掛かりを伏線として先に挙げておいて、謎解きまでの過程を楽しみにします。何度も読み返して楽しむこともします。答え、つまり、話の筋が分かっていても、また分かっているので、話の展開を楽しみます。先読みの効かない文書は、聴くことも読むことも疲れます。マンガは、文字を省く二次元的な図で情報を伝達しますので、文字に較べて伝えたい内容の質も量も変わります。しかし、感覚的に理解する速度は上がります。かなり順番を無視した見方もできます。しかし、コマの並べ方は話しの時系列に載せます。欧米のマンガは左上から始まり右に続きます。日本では、絵巻物の歴史もあって、右から縦書きの習慣があります。この違いは、海外では面白がられています。日本のマンガ本を欧米で複製出版するとき、左右を裏返しにすることがあります。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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