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2. 日本語文書の構造

2.3 語順と向き


2.3.1 文字並びを時系列の記録として理解する

 声に出す言葉は、物理的には音ですので、時系列(time series)データです。音は一過性の事象であって、その場限りで何も残りません。言葉を聞いているとき、幾つかのまとまりのある音の単位を順に頭の中で整理していって、或る区切りでその全体を総合的に理解します。頭の中がどのように働いているかは分かりません。短い時間間隔のデータを記録しておく短期記憶の機能を使うようです。論理の流れが素直でないと、記憶順と取り出し順が狂い、理解に混乱が起こります。音声を文字並びで記録したものが文書です。文字並びにまとまりの有る最小単位が、語(単語、word)です。単語並びでまとまりの有る意味単位を構成するのが句(phrase)です。句を構成する語順は言語ごとに固有の決まりがあります。そして、句の並び順も言語ごとに決まりがあります。これを、日本語ではSOV(主語・目的語・述語)、英語と中国語はSVOの順であると大枠で区別します。説明を補うと、主語・目的語・述語と言うと、それぞれが単語一つと考え易いのですが、実際は複数の語の集合で構成しますので、主語部・述語部のような大枠で考えます。日本人が英語を耳で聞いて理解することが負担になる理由は、音の種類が異なることを聞き分けることと、語順の入れ替えが即座に判断できないからです。文書にして理解することが好まれるのは、時間の束縛がないので、この負担を軽くできるからです。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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