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1. 言語学が関与する環境

1.3 標準化と多様化


1.3.3 人工言語は標準化が意識される

 普通の会話に使っている言語を自然言語と言うのに対して、人工言語は、便利さを目的として工夫される性格を持ちます。自然言語は多様性が有り過ぎますので、人工言語は、なるべく多様性を排除し、言葉数を抑える標準化をします。日本人の多くは、数学式を特別な記号表現と見ますが、そもそもの出発は、話し言語を記号に変えた書き言葉の一種です。そのため、数式を書くことに代えて、文章で表現する方法も実用されていて、数式を見るとき、声に直して言うこともします。数学者同士は、数式を言語として論理を展開するので、一般の人は非常に特殊な集団と見ます。しかし、啓蒙的、教育的には、なるべく文章で説明するのが勝ります。数式記号をコンピュータに教えるコンピュータ言語の代表がFORTRANです。事務処理言語のCOBOLは、数式を文章で記述する方法を使います。数式処理のソフトウエアもその範疇です。幾何学は、歴史的には、言葉での説明が主です。幾何学に代数学的な方法を使うようになったのは、幾何学の長い歴史から見れば、ほんの最近です。図形も書き言葉で表そうというのがグラフィックス言語です。欧米風の科学技術の取り組み方が、言葉による表現に拘ることの感覚は、日本人の理解方法とは違います。日本のマンガは、今や世界的に有名になりましたが、文字を順に並べるような規則が緩やかな二次元的な表現を使います。漢文を読むとき、返り点などを助けにするとしても、視点を前後させて理解する方法は普通ではありません。文字ではなく、図を媒介とする情報伝達の道具は、ピクトグラム(pictogram)があります。日本では、東京オリンピックのとき、世界から集まる多くの言語のお客さんに、言葉を超えて正確な情報を伝える目的に開発されたのが始まりです。こちらは文字扱いではありませんので、この報文では扱いません。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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