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1. 言語学が関与する環境

1.3 標準化と多様化


1.3.2 官製の標準化があること

 言葉の標準化は、社会の秩序と平和を保つ手段として必要です。言葉は、多様化する性質があります。多種類の言葉があると、孤立する集団ができ、相互の意思疎通の障害になりますので、共通の理解を図る方法が必要です。言葉の標準化は、互いに妥協することで自然発生的に成立する場合の他に、権力者側が意図的に制御する場合もあります。日本語の環境で言えば、常用漢字の制定、正書法の提案がそうです。ラジオやテレビで話される言葉は、全国で共通に理解できることを目的にした標準語を使います。これは良い面があると同時に、官主導の立場を色濃く持ちます。官主導の標準化は、それを提案するときと利用するときに幾らかの優越感と正義感とを持ちます。その正義感に染まると、自由で文化的な背景を抑える負の側に作用し、それが行き過ぎると、はた迷惑で、お節介になることがあります。NHK、朝日新聞社、岩波書店などを嫌う文化人が少なくないのですが、嫌う理由の一つは、公平さを言う割りには、官を背景にするような権力的な臭いを感じるからと思います。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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