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1. 言語学が関与する環境

1.2 道具としての文字


1.2.8 言葉は危険な武器にもなること

 文字は、為政者側が権力を保つときの手段として利用してきた歴史があります。一般大衆は、文字を正しく読み書きできない文盲であっても、日常生活で特に困ることはありませんでした。特権階級は、言葉の知識で武装することで優位を保つこともしました。日本ではこれに外来語、特に漢語を使いました。言葉は文化の一翼を担いますので、文字の読み書きができる人は学があるとされ、さらに、お習字が上手であると、力関係だけでない尊敬を受けます。昔の武士は、刀のような武器を持つことを許された階級ですが、漢学と礼節を素養として弁えることをしました。文武両道を極めると言うのがそうです。この論理を裏から見ると、文字、つまり、言葉も武器になることが見えてきます。攻撃に代えた口撃は、的を射た言葉の言い換えです。面と向かって口喧嘩をするのは直接的です。国際間では、メディアを介して、間接的でも激しい遣り取りが行われています。ジャーナリストは、「ペンは剣よりも強し」と言う言葉を好み、権力におもねない態度を矜持(きょうじ)と自己弁護します。しかし、裏を返せば、ペンと言う武器を持った特権階級ですので、礼節の無いヤクザ的な危険人物も存在します。メールを介した誹謗中傷が社会問題化していますが、言葉が危険な武器として使われていることの実証です。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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