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1. 言語学が関与する環境

1.2 道具としての文字


1.2.6 部品に分ける単位が品詞であること

 音の並びを文字に直して並べるとき、その最小要素と組み合わせについての議論が出てくるのは半ば必然です。しかし、音を文字並びに直すこと自体に幾つかの問題があります。アルファベットやカナは表音文字ですので、一般的に読み方を表すときにはこれらを使います。しかし、正確な表現法にはならないことが多いので、発音記号を別に使い、声の出し方を口の開け方や舌の位置などを図解で示すことがあります。日本語ではカナを読みの補助に使うのですが、「ゐ・ゑ・くぁ」を「い・え・か」と単純表記するようになって、声に出す読み方も簡単になってきました。江戸はyedo、円はyenと発音していました。日本語では、アルファベットのRとLを区別しませんが、巻き舌の言い方(べらんめえ)はRの音だと言います。英語の表記は、意味のある音の並びの最小単位を単語とした分ち書きをしますので、個別の単語の性格を品詞(part of speech)に分ける考え方も自然です。品詞の考え方は、欧米言語に接するようになって日本語の辞書にも採用されるようになりました。しかし、品詞分類の歴史は比較的新しいものです。漢字を輸入して使った日本語の文字表記法は、中国語と同じように、文字並びを分かち書きしませんので、品詞の区切りを間違えることが起こります。「かねおくれたのむ」「べんけいがなぎなたをもつ」などがよく例に出されます。言語学的な分け方は、形態素(morpheme)の方を使います。単語の境界判別を行い、意味を持つ品詞の並びに分解することを形態素解析と言います。これをコンピュータにやらせようとする研究は、長尾真(1936-)に始まりました。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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