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1. 言語学が関与する環境

1.2 道具としての文字


1.2.5 文字は形を持った道具と考える

 声に出す言葉は、実体がありません。眼で見る形にする媒体が文字です。文字は、道具や部品の性格があります。言葉を文字の並びに直すと、言葉の研究を具体的に物を扱うように進められます。結果として、言語の研究のほとんどは、文字並びの解析で済ませます。話し言葉は、文法規則を保とうとする保守的な性質があると同時に、時代と共に、変質も受けます。「昔はこういう言い方をした」と言うのがそうです。新しい言葉は、若者の間で創造されることが多く、流行語として広まることもあります。しかし、言葉の骨格、つまり文法構造は、案外なことに丈夫です。言葉を物理的に捉える分野を、ソシュールに始まる構造言語学と言うのがそうです。文字を道具と見るとき、全く新しい言語体系を創作する場合も出てきます。エスペラントがそうです。数学式も言語です。プログラミング言語も、そのような人工言語です。この人工言語は書き言葉として使いますが、これを見るとき、頭の中で声に直して読んでいることに気が付いているでしょうか? これらの言語を構造的に見ると、英語の文法構造を色濃く持っていますので、英語の方言(dialect)の性格があります。言語構造のモデル化の一つは、主語(Subject)・述語(Verb)・目的語(Object)の語順です。日本語はSOVの順、英語と中国語はSVOの順です。構造違いの言語を習うとき、苦労の種(たね)となるのです。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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