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1. 言語学が関与する環境

1.2 道具としての文字


1.2.3 漢文訓読という文体が表れたこと

    文字は、その言語の発声順に並べるのが自然です。しかし他言語の中身(意味)を文字だけから理解したいとき、語順を変えた翻訳文字並びにすることがあります。日本語の環境で習う漢文は、元が中国語です。漢字は日本語の中に取り込まれていますので、熟語単位は、ほぼそのまま理解できます。中国語の翻訳、つまり意味を日本語の音声で理解するように変換するときは、単語の語順を変える返り点をつけ(図1.4)、「てにをは」を補い、動詞などの活用語尾を加え、必要に応じて振り仮名を付ける程度の最小限の作業で済ますことをします。このように変換した文書の読み方が漢文訓読法であって、文語体の一種です。読み下しとも言います(図1.5)。考えて見ると、パズルを解くような変わった読み方です。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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