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1. 言語学が関与する環境

1.1 言語学が生まれた経緯


1.1.5 声を文字で表すことは難しいこと

 もともと、言葉(ことば)は、声に出して相手に伝え、耳で聞いて理解します。文字は、音を図形化して記録する目的で使います。音を記録する文字を表音文字と言い、英語ではletterと使います。英語のcharacterも日本語では文字と訳し、区別が分かりません。こちらは、英字(letter)・数字(digit)・記号(symbol)の集合をまとめて言う言葉です。コンピュータが扱う文字集合はcharacter setと言います。漢字は、音と意味とを持つ表意文字です。英語で言うときはKanji characterと言い、カナは表音文字ですのでKana letterと使い分けます。世界を見渡すと、文字を持たない言語が未だあるようです。日本語も、古い時代に漢字を輸入して使うようになりました。日常会話では、文字は必須の道具ではありません。文字を見るときは、声に出すか、頭の中で音に直して理解しています。そのため、文字の読み方に約束を決めておかないと、正しく言葉が伝わりません。日本語の場合、漢字を当てるとき、音の方に重点を置くか、意味の方に重点を置くかの区別があります。前者が訓読み、後者は音読みです。例えば、言語(げんご)は字音語の言い方、言葉(ことば)は訓読みで使いますが、実は同じことを表しています。これが、日本語を複雑にしている一つの原因です。訓読みは、聞いて紛れることが少ないのですが、音読み熟語は同音異義語が多くなりますので、眼で見て意味を確認しながら理解します。話し言葉で音読みの熟語を言うとき、しばしば訓読みの言い換えで説明することが行われます。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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