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1. 言語学が関与する環境

1.1 言語学が生まれた経緯


1.1.3 外来語の輸入は語彙を増やすこと

 言語環境が異なる場合、物の名前などは、実物を介すれば、相互に用語を翻訳しても理解の相違が大きくなりません。一対一に用語が対応するときは問題が有りません。しかし、一方に有って、他方に無い場合は、無い側は造語が必要です。ほぼそのまま使うのが借用語です。外来語は言葉の輸入です。元からある語と競合が起こります。どちらも、語彙が増えます。日本では、外来語はすべて名詞として扱います。用語の対応が有っても不十分なことがあります。例えば、日本語では兄と弟と二つの用語を使い分けるのに対して、英語ではbrother一つですので、日本語の感覚ではどちらを指しているのかを気にすることが起こります。抽象的な事象を表す言葉は、もっと深刻です。同じ意義の用語が無い場合もあり、また、有っても微妙に理解の違いが起こることがあります。日本古来の言葉は和語と言いますが、抽象的な用語が多くありません。抽象的な用語は、外来語、主として漢語に頼ります。明治以降、ヨーロッパ系の言語が外来語として入ってきましたが、和語に無いものはカタカナ語で使うか、相当する漢語を当てます。熟語を作る造語の機能は、漢字を使うと圧倒的に便利です。そのため、専門用語に、日本で造語された和風漢字熟語が増えました。言葉の輸入があると、同じものに複数の言い方が利用されるようになります。日本語の環境では、漢字の読みに音と訓とがあり、音も漢音と呉音があります。これにカタカナ語が加わるのが現状です。英語も、フランス語とドイツ語の影響を蒙って、複数の言い方が見られます。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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