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1. 言語学が関与する環境

1.1 言語学が生まれた経緯


1.1.2 言語は文化的な侵略の武器になること

 日本の外では、ヨーロッパのように、多種類の民族・言語・宗教・習慣の違いを身近に経験します。自分の言語と他の言語との違いによる相互理解に相違が無いように、注意する方法(マナー)が必要です。自分の言語を守った上で他言語を理解する保守的な態度を持たないと、自分の側の言語や文化を失います。海外言語を無防備に取り込んで知識をひけらかす人は、文化的な奴隷です。アメリカナイズと言う言葉は、文化的にアメリカの奴隷化になることを、皮肉な意味で使いました。植民地支配は、支配者側の言語も強制しますので、他方の固有文化の破壊を伴うのです。国力を背景とした自国優位の先入観を持った言語学者は、被支配側の言語を差別する間違いを犯すことがあります。時枝誠記(1900-1967)は、時枝文法に名を残す言語学者ですが、日本の朝鮮支配のときに、朝鮮語を抹殺することに加担した経歴がありますので、偏った科学的な態度があったと考えています。あからさまな武力による侵略と支配が無くても、一方の言語が他の言語に影響を与えることがあります。日本語は中国語に影響を受けましたが、中国語が日本語から影響を受けたことは、多く無いと言えるでしょう。英語はフランス語の影響を色濃く受けていますが、フランスでは意図的に英語を使うことを避けるナショナリズムがあります。コンピュータ言語の世界で見ると、マイクロソフト社のオペレーティングシステムが普及した経過は、言語支配が成功した例と言えます。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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