アーチ橋の弾性理論による構造解析は、変形が小さいことを仮定し、完成系の幾何学的寸法を使って、活荷重と死荷重を作用させます。そうすると、死荷重に対してアーチリブに正の曲げモーメントが発生し、撓みも起こります。アーチリブを合理的に設計するには、死荷重の作用でアーチリブに軸力だけが作用し、曲げモーメントが最小になるように抑える工夫が必要です。したがって、工場で処女状態のアーチリブを製作するとき、支間をΔL長く、ライズΔFだけ扁平にします。これを架設するときは、ΔL分を短くするように水平反力ΔHを作用させ、これによる負の曲げモーメントを発生させて、正の曲げモーメントを打ち消すように架設の計画を立てます。これが架設時の応力調整の原理です。支間中央での死荷重による正の曲げモーメントをMdとすると、ΔH=Md/Fで計算できます。水平反力の影響線を計算するとき、H=1による水平変位の大きさδHを求めますので(前章14.4項参照)、ΔLが得られます。具体的な数値計算は、エクセルSoftを参照して下さい。なお、ランガー形式のアーチ橋は、アーチリブの曲げ剛性を考えない構造ですので、完成時に水平桁部に曲げモーメントが作用しないようにする、架設時応力調整が簡単になります。
2010.11 橋梁&都市PROJECT |