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15. アーチ橋の計算(続)

15.4 エクセルSoftの解説


15.4.1 計算対象のアーチ橋

 アーチ形式の橋梁は、地域のシンボル的な景観を構成するので好まれています。都市部の道路橋は、幅員を広くしたいので、上路形式のアーチ橋が採用される傾向があります。しかし、通路の下側に或る程度の高さを必要とする立地条件でないと建設できません。その意味で、東京は、案外、起伏の多い地形です。お茶の水に架設された聖橋は、場所にふさわしい形式の上路アーチ橋です(前章図 14.2)。高速道路では、居住環境を避けて山間部に路線を通す計画が多いこともあって、視界を妨げない上路形式が多く採用されています。川幅の広い河川には、路面高さを高くしないように、トラス橋も含め、下路のアーチ橋が多く見られます。下路構造は、広い幅員の橋梁形式には向きませんので、旧国道や地方道のように全体幅員の狭い道路橋か、鉄道橋に採用される例が多くなります。ダムの建設サイトでは、湖底に沈む道路の付け替えがあるとき、湖面に映る上路形式のアーチ橋が好まれています。大支間の橋梁は比較的維持管理に注意が払われるのですが、一般的な中小の橋梁は、丁寧な管理がされていないことが多いので、耐荷力を調べたいとしても、詳細な計算書や図面が無いことも少なくありません。再現設計の計算書は、このような実構造の静的・動的挙動が構造力学的に説明できるような資料を作成することに目的があります。したがって、製作や架設計画に関する計算を省き、或る程度の標準化した仮定を採用して計算書の分量を抑えます。理論と実際との比較は、実橋梁の応力測定をするのが最善ですが、大がかりになりますし、費用も嵩みます。したがって、費用をあまりかけない簡易振動測定が便利です。その結果を判定するには、アーチ橋全体の重量と曲げ剛性の見積もりが必要です。エクセルSoftは、この構造解析に利用することを目的としますが、管理上の資料、また、橋梁工学の参考書としても利用できるように、設計当時の示方書に基づいた設計計算書を再現するようにまとめます。

図15.3 再現設計のモデルに使用した二ヒンジアーチ橋
2010.11 橋梁&都市PROJECT

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