目次ページ,  前ページ,  次ページ

15. アーチ橋の計算(続)

15.2 振動の理論解析


15.2.1 橋梁は複合構造物であること

 橋梁構造物の設計と解析には、数学的な方法を応用するために、種々の理論モデルが提案されます。システムと言う用語は、個別の要素を有機的に組み合わせて、或る機能を発揮するようにした全体を指します。橋梁を構造システムと見る場合、個別の要素を部材と言います。部材個別には種々の力学的性質を考えますが、システムの見方に合わせて、機能の選択をします。ランガーやローゼ形式では、水平桁部分も主構造です。床構造は、架設時は主構造にたいして死荷重扱いをしますが、完成後は主構造の全体曲げ剛性にも寄与する働きがあります。トラス構造の場合、弦材は軸力を伝えるだけの理想化した柱として扱います。弦材の自重は、トラスの格点に分配してマスとして作用させます。弦材の局部的な曲げによる応力や変形は別に扱います。橋梁全体の振動の性質を解析するときの力学モデルは、全体を重さの無い骨組み構造と仮定しておいて、格点に重量をまとめた集中質点(lumped mass)を考えて解析します。実際の構造物の振動を測定すると、このモデル相当の振動の他に、床組みや弦材がかってな振動をするデータも得られますので、測定値の解釈(理論との同定)に苦しむことが起こります。このとき、振動解析の力学モデルが不完全であるとして、一種の精密化に取り組むと、数値解析の手間が膨大になります。この場合には、橋梁全体を一つのシステムとして考えるのではなく、幾つかの独立したシステムが複合しているとみなす方が説明し易くなります。また、それに合わせて、測定位置の選択や、加振方法を選択する必要があります。例えば、床組みは、横桁位置で支えた連続梁の性質が現れます。
2010.11 橋梁&都市PROJECT

前ページ,  次ページ