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14. アーチ橋の計算

14.4 水平反力影響線の計算式


14.4.4 固定アーチの場合の静定基本系

図14.9 弾性重心に作用させる三つの不静定反力
 アーチリブの支点で力学的支持方式は、ヒンジとするのが普通です。西海橋(図14.7)は、支点を固定支持として設計した上路のアーチ橋であって、この形式のアーチ橋では世界に誇れる名橋です。固定アーチは、力学的には三次の不静定構造ですので、応力解析について幾つかの研究があります。基本とする静定基本系は、図14.8と同じ、ヒンジで単純支持された曲がり梁です。不静定力の一つは、二ヒンジアーチと同様に水平反力とし、残りの二つは左右支点での曲げモーメント反力です。三つの不静定力は、外力による静定基本系の変形から、不静定反力方向の変位を0に戻す弾性条件で求めます。コンピュータが使えなかった時代、数値計算の手間を最小にするための工夫に、弾性重心法が工夫されました。この一つは、図14.9のように、静定基本系を片持ち梁とすることです。右端の不静定支点反力は三成分あります。外力の作用によって、この三つの力方向の変位成分を0になるように反力を求める弾性条件は、三次の連立方程式を解かなければなりません。そこで、この支点に剛な仮の部材を継ぎ足して、仮想の支点位置をアーチのほぼ中央に置きます。そうすると、この仮想支点に作用させる三つの反力による変位は、それぞれが他の力の作用による変形を受けないようにすることができます。この位置をアーチの弾性重心と言います。このようにすると、弾性重心に作用する不静定反力の影響線を、個別に計算することができます。つまり、個別に、不静定反力単独によるアーチリブの撓みを計算すれば、その不静定反力の影響線と相似になるからです(この節の最初の項参照)。
2010.10 橋梁&都市PROJECT

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