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14. アーチ橋の計算

14.2 アーチ橋の各部の名称


14.2.5 長大アーチ橋への挑戦

図14.6 シドニーハーバー橋(1931:撮影倉西茂)
 鋼のトラス構造は、マクロに見て大寸法の支間を構成できますので、19世紀後半から長大支間の橋梁の建設競争が始まりました。ゲルバートラス形式のイギリスのフォース橋(1890)は、その象徴的な構造です。鋼アーチ橋では、オーストラリアのシドニーハーバー橋(502.9m:1931年)が観光名所としても有名です(図14.6)。米国のベイヨン橋は、後から着工して一年前に完成し、2フィート差(60cm)だけ長い支間にして当時の世界一の座をさらいました。シドニーハーバー橋の主構造は、トラス状に鋼部材で組み上げたブレースドリブ構造です。水平な通路部分を小径間のトラス連続橋として設計しておいて、それを適当な間隔でアーチリブから吊り下げる複合構造です。結果的に、全体アーチの形状は下路構造です。長大アーチ橋は、建設のときに、橋桁を下から支える仮説の足場を作ることができませんので、両岸から片持梁のように伸ばしながら中央で閉合させる工法を取ります。シドニーハーバー橋は、見掛けは固定アーチですが、力学的には二ヒンジアーチです。支点位置のトラス高を高くしてあって、上弦材の位置をケーブルで引く架設工法が採用されました。日本の西海橋(216m:1955年)は、上路構造の固定アーチで設計されたブレースドリブアーチです(図14.7)。片持ち梁式に桁を延長するとき、支点位置で不利な応力状態にならないように、仮設の斜めのケーブルで途中を支える計算をし、変形を測定しながらケーブル張力を調整しました。

図14.7 西海橋(1955:Wikipediaより)
2010.10 橋梁&都市PROJECT

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