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14. アーチ橋の計算

14.2 アーチ橋の各部の名称


14.2.4 下路形式に採用するアーチ構造

図14.5 下路のアーチ橋の諸形式
 19世紀以降、安価で大量の鋼材が利用できるようになって、相対的に軽量で曲げ剛性が大きく得られるトラス構造が工夫されました。トラスは直線部材を網目状に組み合わせるのですが、荷重は節点(橋梁工学では格点と言います)に作用するように設計します。これを間接荷重と言います。実際の橋梁構造は、左右の主桁の格点を横桁で繋ぎ、通路部分の小単位の桁(床桁)を載せる複合構造です。図14.5は、アーチリブから床桁を吊り下げる形式のアーチ橋です。一般的なトラス橋と構造力学的に区別がつく特徴は、斜材が無いことで分かります。もし格点の個所をピン結合と仮定すると、この全体は不安定なトラス構造です。したがって、橋全体をマクロに見て曲げ剛性を持たせることで、実用的な橋梁になります。曲げ剛性を持たせる部材をアーチリブとする図14.5Dは、標準的な2ヒンジの下路アーチです。水平反力は、ヒンジを介して大地に伝える外的不静定構造です。その下の図14.5E, F, Gの三形式は、アーチリブの両端部を水平桁に結合させます。橋全体は単純支持ですので、外的静定構造になっています。タイドアーチ(図14.5E)は、下弦材が弓の弦(tie)のように、アーチリブの水平反力と釣り合わせる引張材として設計します。ランガーアーチ(図14.5F)は、曲げ剛性を持つ水平桁部を、曲げ剛性を考えないアーチリブで補剛した構造です。ローゼアーチ(図14.5G)は、アーチリブと水平桁部、共に曲げ剛性を持たせた設計です。これらの下路アーチ形式は、中程度の支間(150m前後)を渡す構造として、地域のシンボル的な景観として多く見られます。
2010.10 橋梁&都市PROJECT

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