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14. アーチ橋の計算

14.1 石造アーチ橋


14.1.1 昔からあるのは半円形のアーチ

図14.1 ボスニアのモスタル橋(破壊前の写真:アルベール・カーン1912)
 アーチ橋は古くから建設されています。しかし、力学原理を応用して設計し建設した歴史は、19世紀からであって、日本では明治以降、まだ100年ちょっとしか経っていません。世界的に見れば、西暦紀元前、フランス南部に建設されたガール水道橋は、現代の橋梁工学から見ても高度の技術が応用されていたことが想像できる構造です。この時代、構造力学が応用されたわけではありませんが、幾何学(geometry)、現代的な専門で言えば測量学、の実用知識を応用した造形美は、見事です。石造アーチ橋は自重が大きいので、本体が安定状態で完成しさえすれば、人馬程度の追加の重量(活加重)を特別に考慮する必要がありません。何もない空間を渡すように石造アーチを建設するには、石材をアーチ状に積み上げる仮の足場が必要です。高さが高いか、下から足場を組むことができないときは、木材などで仮のアーチ橋を架設しなければなりません。この建設でも、高度の技術力が必要であったことを理解しておく必要があります。図14.1は、1566年に建設されたボスニアのモスタル橋です。写真家のアルベール・カーン(Albert Kahn; 1860-1940)が1912年に撮影した旧橋の写真です(アルベール・カーン美術館パリ蔵、許可は申請中です)。残念なことに、1993年の内戦のときに破壊され、2004年に元の形状に再建されました。
2010.10 橋梁&都市PROJECT

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