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13. 連続桁の計算(続)

13.2 連続梁の計算に使う力学モデル


13.2.6 連続橋の振動は波動の性質があること

 橋桁の振動を解析する力学モデルは、ある範囲の部材重量を一ヶ所の集中荷重にまとめた質点系モデル(lumped mass model)を考えます。質点は運動の自由度が3方向ありますので、振動モードは質点数×3です。条件を単純にした上下動だけを解析しても、多くの振動モードが得られます。振動測定の結果と付き合わせるとき、振動モードのすべてを説明できないのが実情です。多くの振動測定をしてみた経験から、構造物の振動には、波動としての性質もあることが分かってきました。例えば、斜張橋のケーブルは、橋本体から見れば局部的な部材であって、独立した振動現象を示します。送電線と同じように、パルス状の波形が支点間を往復する波動現象が観測できます。この加速度振動記録をフーリエ解析すると、多くの固有振動とそれに対応する振動モードが計算できます。最も周期の長い振動モードは、全体が一山の波形です。しかしこのモードが実際に観察されるのは風が起振するカルマン渦による振動と共振するときです。この振動は、簡単な制振装置で止まります。つまり、力学モデルを解析するときの振動モードで振動することはなくても、波動が支点間を折り返す周期が測定されます。橋梁では、支間方向に振動波形が往復する性質があって、波動の速度は約200m/sec2です。そうすると、100mの長さの橋では卓越周期は1秒、つまり、振動数は1Hzです。連続橋の場合には支点位置が振動波形の節(ふし)になります。波動としての振動は、支点間の往復ですので、波形が折り返す区間は径間数と関係を持ちます。例えば3連続等径間の場合には、振動周期で1:2:3となる卓越振動が得られます。トラス橋のスラブ上で振動を測定するとき、例えば、トラスの格間(パネル)数が5であると、振動周期でデータを整理すると、1:2:3:4:5の比になる5個の卓越振動が得られます。これは、トラス主構造の卓越振動とは別のモードです。鉄筋コンクリートのスラブが劣化して亀裂があると、波動の往復が途中で途切れます。振動周期の長い側から測定値の欠けが起こります。この性質を利用すれば、鉄筋コンクリートスラブの健全度が判定できるのではないか、と(筆者は)思っています。実例は、第1章、図1.1に示したトラス橋で判定しました。
2010.4 橋梁&都市PROJECT

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