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13. 連続桁の計算(続)

13.1 古典的な不静定問題


13.1.2 不静定構造物の安全問題の典型であること

 橋梁構造物の設計は、なるべく使用材料を少なくして、外部荷重を支えるように工夫します。長い支間を渡す場合、自重も大きくなります。不静定の構造形式は、自重による応力が一意に決まりません。近代的な橋梁構造物は、死荷重応力を制御できるような製作や架設工法を工夫します。ゲルバー形式のような静定構造物にすれば、死荷重応力の不確かさを避けることができます。しかし、どこか一ヶ所でも部材が破壊すると、橋梁全体が崩壊する危険をはらみます。したがって、安全対策には種々の経験的手法が組み合わされます。材料力学的には、断面寸法を大きくして、応力度に余裕を持たせます。これが行き過ぎると、過剰設計と批判されます。構造力学的には、部材を余分に追加して不静定次数を増やします。これには、外的不静定にするのと、内的不静定にするのと、その両方も組み合わせます。連続橋は、支点を増やす外的不静定構造です。安全にする積もりが、条件が変わると破壊を引き起こすことの例を上の項で説明しました。日本では、軟弱な地盤基礎が多いこともあって、支点の不等沈下が珍しくありません。そのため、曲げ剛性に余裕の少ない、特にコンクリート系の連続桁橋の建設を避けていました。なお、橋全体の安全性に関しては、やや高度の政治的・戦略的配慮がからみます。並列システムは、一つが事故を起こしても、残りでバックアップさせる考え方です。日本は平和国家ですので、主に自然災害を考えますが、橋は戦略的な破壊の対象に狙われます。耐爆橋梁と言う概念があります。意図的に不静定部材を多用して、局部的に部材が被爆しても、全体構造が崩壊しないように設計します。道路網全体計画では、補修のことも考えたバイパスの余裕を持たせる安全性を踏まえたいのですが、この判断になると、工学的な問題だけでなく、政治的・戦略的意向も入ってきて、複雑な問題になります。
2010.4 橋梁&都市PROJECT

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