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13. 連続桁の計算(続)

13.1 古典的な不静定問題


13.1.1 二点支持と三点支持の問題から

 最初に、応用力学の問題を一つ出します。長さの長い石の矩形断面の梁を、安全に2点で支えたいとします(図13.1)。支点の位置を、梁の端からどれくらい中央に寄せればよいでしょうか?

     図13-1 曲げ応力を最小にする二点支持は?       図13.2 三点支持は不静定である
 
 構造力学で、梁の曲げモーメントの計算知識を使えば、支点上の負のモーメントと、支間中央の正のモーメントとの大きさを等しくする条件を使い、簡単な二次式を解いて計算することができます。答えは、端から約0.2Lの個所であって、支点間は約0.6Lの長さです。つまり、(1:3:1)の長さ比の位置です。長い梁を安全に支えたいとして、中間を支えたいとします。これが二径間連続梁です。単純に考えると、端支点と中間支点間を約0.5Lよりも多少短くできますので(図13.2)、折れの安全性が向上すると思うでしょう。ところが、これは一次の不静定構造物ですので、梁の曲げ変形と支点位置での弾性を考えなければ、三つある支点の反力が一意に決まりません。極端な場合、端の支点が仮に効かなくなると、中間支点での負の曲げモーメントは、上記の二点支持の場合に比べて一挙に約5.8倍、中間支点が効かなくなると、正の曲げモーメントも、ほぼ同じ比率倍に増え、最悪の結果として梁が折れます。この問題は、イタリアのルネッサンス時代、重くて長い大理石の円柱を木製の支持で仮置き保存するときの破壊現象として顕在化したものです。二点で支えるのに加えて、中間に追加の支点を入れれば、より安全になるとの予測を裏切って、却って、中間支点で折れが起こることを、経験的な知識として得ていました。しかし、論理的に説明ができなかったのです(朝日選書686、訳書「橋はなぜ落ちたのか」、2001)。柱として使う長い石材を横にして移動させたり仮置きしたりするとき、自重だけで曲げ破壊をしないようにする、或る寸法と長さの限界がありますし、支える位置に注意する必要があります。
2010.4 橋梁&都市PROJECT

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