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12. 連続桁の計算

12.3 連続桁の構造上の課題


12.3.1 ヒンジを使わない構造

 橋梁は、大きな見かけによらず変形し易い構造であることが、建築物とは異質です。相対的に大きな変位や回転が起こる個所は、内部的にはトラス部材の接合点、外部的には支点です。変形を拘束すると大きな応力が出ますので、支点では機械構成のピンとローラーの組み合わせが使われます。現在では殆んど見ることが無くなりましたが、初期の鋼橋ではピントラス構造が多く採用されました。隅田川に架かる清洲橋(1928)は、当時の高強度鋼として開発されたデュコール鋼をチェーン状にして主ケーブルに使った連続吊橋です。強度の高い大きな断面を持つ引張材を繋ぐ方法として、溶接は未だ信頼性がありませんでしたので、鍛造で両端に穴を開けた小単位の部材をピンで連結しました。ピン結合は、構造力学理論に載せ易い構造です。しかし、特に、鉄道橋のように大きな荷重を通す構造では、ピンの個所で騒音や振動が起き易いので、この部分全体を一体に構成し、弾性的な変形で対応させる設計を採用するようになってきました。中小支間の橋梁では、ゲルバー形式の構造ではなく、連続桁形式を採用し、桁中間のヒンジを省くようになってきました。このためには、適度なしなやかさを部材に持たせます。材料の強度が高ければ、同じ断面でも長さを長くできます。連続桁形式が普通に採用されるようになった背景には、不静定構造物の解析を敬遠しなくなったことと平行して、鋼橋では高張力鋼材が利用できるようになったこと、コンクリート橋では高強度のコンクリートを利用するPC技術、に負うところが大きいのです。許容応力度を高く取れなくて、結果的に変形能の低い桁で連続桁構造にすると、支点の僅かな不等沈下が大きな応力を発生する危険があるからです。
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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