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12. 連続桁の計算

12.1 ゲルバー形式の構造


12.1.3 吊桁部分の構造で問題が起こること

 図12.3 長生橋の吊り構造部の外観
 標準的な3径間ゲルバー形式の中央部は、左右から張り出した桁に受け部を設けて、その上に単純桁を載せる掛け違い構造と、ヒンジを介した吊材で吊り下げる支持方式とがあります(図12.1)。ゲルバートラス橋では、外形が連続トラス構造に見えるように、飾りの弦材(ストラット)を使うことがあります。図12.1で、破線で描いた部材がそうです。コンクリート系のゲルバー橋は、前者の支持方式が普通です。鋼構造、それも長大支間のトラス構造の場合には、中央径間部分を下で組み立てておいて、吊り上げる架設工法が取られます。Quebec橋は、架設中に二度も事故を起こした橋梁としても有名になりました。最初は、死荷重応力の見積もりが甘かったことによる圧縮材の座屈崩壊、そして二つ目は中央径間を吊り上げるときの失敗でした。中央径間部分を下から支えるのではなく、吊り下げる構造を採用するとき、吊材はケーブルではなく引張部材を使います。韓国ソウルの聖水大橋の落橋事故(1994)は、この吊材部分の破壊の兆候を過小に評価していて、結果として突発的な崩壊になりました。米ミネソタ州ミネアポリスでミシシッピ川に架かる州間高速道路橋の崩落(2007)も衝撃的でした。一般に、静定のトラス構造は、どれかの部材が一本でも破壊されると、それが引き金になって全体構造が崩壊する性質があります。しかし、実際に建設される単純トラス橋、連続トラス橋は、構造形態にかなりの不静定の性質があって、案外耐荷力があります。2007年、連続トラス橋の木曽川橋の斜材が腐食で破断しているのが発見されましたが、幸いなことに、目だった全体変形が起こりませんでしたので、大事故になりませんでした。ゲルバートラスの吊り桁部分の構造は、管理の面で問題が起こります。長生橋の上弦材のヒンジ部分は、最初の構造がどのようであったかは未調査ですが、後年、改造されたことは溶接の補助部材を使っていることで分かりました。
図12.4 橋軸方向の変位を許すヒンジ構造の詳細
2010.3 橋梁&都市PROJECT

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