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11. 小径間吊橋の計算(続)

11.6 吊橋の力学的な性質


11.6.3 撓みは放物線状の変形が減ること

 吊橋の支間全体の撓みは、ケーブルが、上向きの等分布荷重分相当の内力を桁に作用させ、放物線状の変形を相殺するように働きます。変形モードをフーリエ成分で考えると、相対的に二次変形モードが大きく現れます。これは、支間の1/4点付近の撓みが相対的に大きくなる傾向として観察されます。橋梁工学では、単位の集中荷重の移動による応力と、変位の影響線を求めることが、必須の計算です。新しく橋梁を設計する場合、影響線は、最大・最小応力の見積もりに必要です。製作と架設の手順を考えた計算も必要です。特に不静定構造の場合には、架設工法次第で死荷重応力が変わります。しかし、既設の橋梁の再現設計計算は、活荷重による力学的挙動を理論的に求めることに重点を置きます。この計算は、既設橋梁の調査、主として撓みの測定と振動解析の測定と突き合わせるときに必要です。したがって、再現設計計算は、設計時の構造仮定ではなく、実情に合った構造仮定を使う必要があります。設計仮定の力学モデルと実際構造とが異なるのは、特に吊橋では補剛桁の曲げ剛性と捩れ剛性の見積もり方法が問題です。トラス桁の設計の場合、床組の重量は横桁を介して格点に伝えます。全体をマクロに観察すると、床組とトラスとの合成作用を考えたくなります。構造的にみて、全体を合成桁とする仮定はやや無理がありそうですが、最小限に考えると重ね梁の仮定、その上としては弾性拘束を考えた合成断面です。スラブを主桁に一部として取り込むと、トラス桁全体の中立軸がスラブ側に寄ると予想します。この予想は、機会があれば、実橋で応力測定をして確かめたいところです。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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