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11. 小径間吊橋の計算(続)

11.5 撓み振動の計算


11.5.5 卓越振動と固有振動とを区別する

 実橋梁の振動現象は、全体としての大波と、局部的な部材振動の小波とが混ざります。吊橋の曲げ変形の自由振動は、支間中央に節のある左右逆対称の2次振動モードが卓越することが経験的に知られています。これは大波の方です。振動測定の波形を数学的に解析するとき、どれが全体系の振動であるか、局部的な部材の振動であるかの区別が難しいことが起こります。したがって、振動測定のセンサーを設置する個所を吟味し、数箇所での解析結果を相互に比較して、全体系か局部系かを判別する必要があります。単純支持桁の固有振動モードは、数学的には無限に存在するのですが、実際現象として測定結果の説明に意義を持つ卓越振動は、せいぜい10次程度までです。したがって、振動解析の動的モデルは、質点数を抑えてマクロ化した構造仮定で十分です。振動測定をして、波形のパワースペクトルを計算し、パワー(エネルギー)の高い振動数順が卓越振動の順位です。実際の吊橋で振動測定をして解析してみると、先入観をとはかなり異なった結果が得られます。箱ヶ瀬吊橋で簡易振動測定をした結果を見ると、6次の振動モード3.3Hzが最も卓越することが分かりました。この振動モードは、支間を6等分した長さ、約34mを一山とする波形の振動に当たり、波動としての速度が約200m/sec相当の定常波形の振動であることが分かりました。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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