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11. 小径間吊橋の計算(続)

11.3 温度変化による応力と変形


11.3.1 夏冬で縦断勾配が変化すること

 単純吊橋は、外的に一次の不静定構造物ですので、大地とケーブルとの相対的な温度差があると、ケーブルの長さが伸縮し、結果として補剛桁に応力と変形が出ます。ケーブルの長さ変化は、ケーブル全長に温度変化分と線膨張係数とを乗じて求めます。この長さ変化分を相殺するように不静定のケーブル水平反力の増分を計算します。ケーブル全長の計算式は、前章の式(10.2)です。温度変化は、設計条件で仮定しますが、標準温度(20℃)±30℃程度です。線膨張係数は1.2×10-5を使います。水平反力増分Hによる弾性伸び分は、式(10.3)を元に計算を済ましていますので、温度変化分のケーブルの伸縮量を相殺するケーブル水平反力が計算できます。そして、引張軸力を受ける梁に、等分布荷重q=8FH/L2に換算して、撓み(式10.12.3)と曲げモーメント(式10.13.1)を計算します。実際の吊橋で、温度変化による縦断勾配の変化を測定した例を筆者らは知りません。夜昼の温度変化程度では有意な測定が難しいでしょう。夏・冬と季節を変えて測定することは、機会を選ぶことが必要ですが、よほど興味がないと実行できない嫌いがあります。
2010.2 橋梁&都市PROJECT

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