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10. 小径間吊橋の計算

10.2 吊橋ケーブルの計算


10.2.3 弾性理論を応用するのが実践的であること

 式(10.1)の左辺は、補剛桁に引張軸力が作用する力学モデルを表します。右辺にも出てくる水平反力の増分Hが吊橋の特徴を表す不静定力です。活荷重pが作用することで、ケーブルに追加的に発生する水平反力分です。右辺に現れるHの項は、単純支持された補剛桁に対して上向きの等分布荷重の作用に変わります。吊橋補剛桁の変形と応力は、この上向きの荷重の作用と、引張軸力(Hd+H)による補強梁としての性質の二つで、単純桁の変形と応力よりも大幅に小さくなります。簡易な歩道専用の吊橋は、曲げ剛性EJ→0であるとした力学モデルです。式(10.1)は、代数学的には非線形です。線形と言うのは、二種類の荷重p1とp2とが独立に作用するときの変形w1,w2と、水平反力の増分H1,H2とを計算しておけば、(p1+p2)の場合の変形を(w1+w2)、水平反力増分も(H1+H2)と計算できる場合を言います。これは構造力学では重ね合わせができると言います。線形である不静定構造物は、不静定力の影響線を求めて荷重の重ね合わせの計算ができます。式(10.1)は、左辺にHを含み、Hによって生じる変位wとの積の形がありますので、非線形の微分方程式です。この形で扱う吊橋の理論を撓み理論(deflection theory)と言います。式の左辺で、Hdに較べて荷重pによるHの増分を無視すると、式(10.1)は線形式になり、解き易くなります。線形式で扱う場合が、吊橋の弾性理論(elastic theory)です。活荷重による応力計算をするときは、弾性理論で十分正確です。撓み理論の場合も、仮に(Hd+H)を定数と仮定して線形の弾性理論の式で解いておいて、Hの仮定値を補正する繰り返し計算をします。この場合に、弾性理論に基づく影響線を応用する方法が、Perryの影響線解法の趣旨です。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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