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10. 小径間吊橋の計算

10.2 吊橋ケーブルの計算


10.2.1 単純吊橋は一次の不静定構造であること

図10.6 単純吊橋の幾何学的形状
 両端をヒンジで支持した単純桁を、放物線ケーブルで吊った形式が単純吊橋です(図10.6)。この形式は、構造力学的に言えば一次の外的不静定構造ですので、その内部応力は不明です。つまり、架設工事次第でケーブルの水平反力、それに関連して補剛桁の応力も変化します。力学的には、完成時、死荷重のみの載荷状態で補剛桁の応力が0になるように架設工法を計画します。気温の変化があればケーブルが伸び縮みしますので、それに引かれて桁も曲げを受けます。ケーブルは、塔を立てて支え、塔頂でケーブルを固定するサドルで橋軸方向の変位を固定します。このとき、塔を自立させるように曲げ剛性を大きくすると、塔の基部に余分な曲げ応力が発生しますので、不静定次数が上がります。これを避けるため、中小吊橋ではタワー基部をヒンジにしたロッキングタワーが採用されます。ケーブル形状は、サドル間で測った径間とサグが変動します。九州の若戸吊橋は、支間が長く、塔の剛性も大きいので、塔を自立させた構造です。そうすると、塔頂の前後でケーブルの水平反力が異なります。つまり、不静定次数が上がります。完成時に、この差が最小になるようにサドルを固定することを計画すると、ケーブルだけを張り渡す架設時にサドルの前後で水平反力に差を付けなければなりません。これは不可能ですので、サドル全体を塔頂で径間の外側にセットバック(後退)させておいて、架設の進行に合わせて中央径間側に移動させました。長大吊橋では、サドルの移動ではなく、塔全体の弾性変形で塔頂間の伸縮に対応させる施工をします。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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