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10. 小径間吊橋の計算

10.1 小径間吊橋の解説


10.1.2 小吊橋の構造は実践的な工夫があること

図10.4 耐風索を配置した小規模の道路橋吊橋
 人だけでなく、車両交通に利用する中小吊橋は、左右二本の放物線ケーブルを使って床横桁を吊り、縦桁を渡して通路にします。通路の曲げ変形と捩れ変形を抑えるため、構造上の工夫が必要です。歩道専用の吊橋は、手すりも含め、通路部に複数の水平ケーブルを別に張って通路を補強します。放物線状のケーブルは、歩道部を水平に支え、全体重量を持たせます。放物線ケーブルだけでは、全体の曲げ変形を抑える作用が大きくなりません。通路部の水平ケーブルに大きな引張力を作用させれば、歩道橋としての実用的な曲げ剛性が得られます。似た構造は、電車の架線構造に見ることができます。放物線のケーブルが別にあって、パンタグラフが当たる電線を水平に吊ります。水平に保つ電線部は、放物線ケーブルとは独立させた端部に、張力を加える錘をぶら下げる個所を見ることができます。この水平反力は内部応力の性格を持つ力であって、ケーブル自体に曲げ剛性が無くても、曲げ変形を抑えます。昔の路面電車の架線は、適当な間隔で横に張ったケーブルで支えていましたので上下の変形が大きく出ます。歩道専用の吊橋の、通路部に引張力を加える水平ケーブルは、上下の撓みだけでなく、支間方向と直交する方向の水平変位も抑えます。吊橋の補剛桁は、支間方向の上下の曲げ変形を抑える目的に使うのですが、桁自体には支間方向の水平軸力を作用させません。放物線ケーブルの水平力成分は、曲げ変形を抑える作用もします。しかし、幅員方向の水平変位と捩れ変形を抑える作用が小さいので、簡易な吊橋では横変位と捩れを抑える耐風索(storm cable)を張ります(図10.4)。
2010.1 橋梁&都市PROJECT

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