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9. PC桁橋計算エクセルSoftの解説

9.3 全体構造系の仮定


9.3.2 振動の性質を説明できる計算が必要

 既設橋梁の現況を把握するには、荷重が分ったトラック重量などを使った撓みの実測から全体の剛性を求め、再現設計の計算値と比較するのが最も直接的な方法です。この計算には、自重の見積もりと、全体断面の曲げ剛性を求めておく必要があります。撓みの測定は、思った以上に時間も経費も掛かります。筆者らは、通常の交通状態での振動を簡易な方法で測定することで、間接的ですが、橋梁の耐荷能を推定しています。一般的な傾向を言うと、まず振動波形の乱れを見ます。完成直後のコンクリート橋は、RC,PCともに、振動波形のオシログラムはきれいな正弦波形を示します。しかし、供用年数の増加と共に、波形がきれいではなくなります。その原因は部材内部にひび割れなどが増え、内部摩擦が効いて、振動の性質で言う減衰係数が大きくなるからです。波形の乱れはRC構造物の方が大きく観察されます。コンクリート構造全体のマクロに考えた弾性係数の経年変化については、データが乏しいのですが、振動数の測定値は鋼桁系の桁橋よりもやや大きいことが統計的に得られています。この理由として、実橋のコンクリートの強度が設計時の仮定よりやや大きく増進するからではないかと推定しています。また、コンクリート系の橋梁は、鋼桁橋に較べると捩れ剛性が大きいので、横方向の荷重分配の効率が鋼桁系よりも大きくなります。これは幅員の左右で非対称に変形する捩れ振動の振動数が、全体の曲げ振動の振動数よりも相対的に高く出る傾向から判定しています。この振動測定の結果を説明するためには、再現設計の計算で捩れ剛性を考えた計算法が必要です。
2009.12 橋梁&都市PROJECT

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