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9. PC桁橋計算エクセルSoftの解説

9.2 材料の力学的な仮定


9.2.1 引張応力度とひびわれの考え方

 コンクリート桁の設計は、全体としての構造解析で要求される応力(曲げモーメント、軸力など)が許容範囲に入るように、施工法を考えた断面の提案が行われます。この大枠的な分類が、PCとRCです。PC桁の断面提案のとき、通常は活荷重が作用しない死荷重だけの載荷状態で、コンクリート断面に引張応力度が出ないようにします。RC構造は、死荷重載荷状態でも引張応力度が出ることを考えます。PC桁で、活荷重が載荷しても引張応力度が出ないように設計するものをフルプレストレッシング、部分的に引張応力度が生じることを許すものをパーシャルプレステレッシングと言い、後者をPRC構造と言います。コンクリートには何がしかの引張強度がありますので、引張応力度が或る許容値に入るように計画すれば、鉄筋を使用しなくても、設計荷重の範囲では亀裂(ひびわれ)が発生しない断面を提案できます。これらの区別は、施工設計のときに用いられますので、完成した桁を外見から見て判別できる分類ではありません。引張側にひびわれが発生すると、その時点から鉄筋が効いて、ひびわれが中立軸まで延びるのを抑え、結果として、桁全体の破壊強度(終局強度とも言います)に達するまでに十分の耐荷力が残ります。設計活荷重が作用する状態でひびわれが発生するような断面は、本来、欠陥設計です。しかし、ごく限られた状態で生じる最大応力度の状態で、一つの大きなひびわれではなく、それが分散して発生するように合理的な配筋をすれば、個別のひび割れ幅が小さくなります。ひび割れが深く進行しませんので、耐荷力の低下を抑えることができます。この判定には、鉄筋の作用位置でのコンクリートの引張歪みの大きさが重要なパラメータです。実験的にひび割れを観察するとき、表面に見える個別のひびわれ幅が一つの判断資料になります。実用的な提案は、許容ひびわれ幅として0.1ないし0.2mmが提案されています。しかし、ひび割れ幅は、隣接するひびわれ間隔と関連しますので、断面設計時に予測することができません。したがって、設計計算で断面提案の段階は、コンクリートの許容引張強度を考える方が理に適います。
2009.12 橋梁&都市PROJECT

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