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9. PC桁橋計算エクセルSoftの解説

9.1 PC桁の製作環境


9.1.2 死荷重応力は一意に決まらない

 構造力学的に言うと、不静定構造物の死荷重応力(曲げモーメントや軸力など)は、架設の方法次第で分布が変わります。したがって、部材断面の設計は、架設の段取りから考えなければなりませんし、また、架設段階で設計通りの応力を実現させる施工時の工夫が必要です。この全体が応力調整であって、多くの技術と経験が反映されます。構造部材単体は三次元的な連続体の形状を持ちます。理論的に扱うときは、理想化した条件を仮定した微分方程式を元に解析をします。しかし、構造力学的にミクロに見れば、複雑で巨大な次数を持つ不静定構造です。実用的な計算をするときは、連続した全体の内、飛び飛び(離散的、discreteの訳)の座標位置で考えますので、最初からそれに合わせる解析法として有限要素法(Finite Element Method: FEM)が応用されます。しかし、外力が全く作用していなくても、連続体の内部応力度が存在することがあります。これは内部的には釣合っていて、外からは伺い知ることができません。実際にどのようになっているかは分らないのです。或る条件を想定して理論的に推定するとき、局部応力・残留応力・温度差応力などと呼ぶ応力解析が行われます。PC桁は、制御された施工方法で、主として桁の内部曲げ応力度の分布を意図的に調整して製作する部材です。この部材を組み合わせて、全体構造に構成すると、さらに複雑な不静定構造になりますので、製作から架設までの段取りに合理的な施工計画が必要です。こちらの方は、製作・施工時の設備などと関わる専門分野を構成しますが、計算原理などの常識は弁えておくことが望まれます。一方、完成後のPC構造物の、活荷重による応力度と変形などは、架設作業までの応力履歴とは独立に計算することができます。この章のPC桁の計算は、主として完成後の並列PC桁橋の計算を扱います。  
2009.12 橋梁&都市PROJECT

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