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8. RC・PCスラブ橋の計算

8.1 問題点の解説


8.1.5 曲げ剛性と捩れ剛性を持つ格子構造をどう扱うか

 格子桁の分配係数を、より理論的に計算したいとき、まず、主桁だけが、曲げ剛性に加えて捩れ剛性も持つとする力学モデルを考えます。代表的にはHombergがこの解析法を発表しています。しかし、設計に応用するには複雑過ぎる嫌いがあります。実用的な計算は、2主桁構造までです。コンクリート橋(RC,PCとも)は、肉厚の桁断面自体が或る程度の捩れ剛性を持ちますので、並列する桁全体を均質な直交異方性版にモデル化することが実用的です。PC桁を多く並べる桁橋の計算では、Guyon-Massonet(ギヨンとマソネ)が提案した分配計算の方法が主に使われていました。コンピュータが手軽に利用できなかった時代、直交異方性版の応力を一般的な設計事務所で数値計算することは殆ど不可能でしたので、基本的な条件であらかじめ計算した数表を利用して、二種類の内挿法で幅員方向の分配を求めます。直交異方性版は、桁の捩れ剛性をパラメータH(後の式8.1参照)で考慮するのですが、これを、完全な弾性版の場合と、捩れを考えない版(H=0)の場合との両極端の計算が数表にまとめられていますので、実際はその中間になるとした内挿計算をします。数表は、主桁の本数を均した版について、幅員方向を8等分した格点で計算してありますので、主桁位置での分配を再度内挿して桁個別の分配を求めます。直交異方性版でモデル化すると、主桁と横桁の単純捩れ剛性を考えに入れますので、分配効率が向上します。捩れ剛性は、実際の構造で測定し、理論仮定値との突き合わせが必要です。しかし、実測の方は殆ど行われていませんでした。機械部品の場合には実物モデルを使った実験ができますが、橋梁構造物では実物が大きすぎることと、構造が複雑ですので、測定が難しいからです。一つの手掛かりは、筆者らが開発した簡易振動測定をして、幅員全体としての撓み振動と、左右非対称の捩れ振動数を測ることで、擬似的に2主桁橋としての分配効果が比較できます。測定例は未だ多くありませんが、鋼のプレートガーダーに較べて、コンクリート系の桁橋の分配は、効率がよいことが分ってきました。また、単純トラス橋は、見かけが華奢であっても、案外、単純捩れ剛性が効いて、左右主構への分配の効率がよいことも分ってきました。
2009.11 橋梁&都市PROJECT

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