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7. 鋼鈑桁橋計算エクセルSoftの解説

7.1 構造の理解


7.1.3 再現設計作成がなぜ必要となるのか

図7.2 非合成桁と合成桁の応力度分布
 既設橋梁の現状を把握し、耐荷力を判定したいときは、少なくとも、対象橋梁を現地で簡単な目視観察をすることと並行して、それがどのように設計計算されたかの資料を調べます。普通、管理者側で保存されている橋梁台帳を使います。詳細設計図面が無く、元の計算書を保存していないことも多いので、計算書を再現するデスクワークが必要です。これらの作業をするとき、建設当時の設計・製作・架設方法の理解が欠かせません。元の設計図と計算書があれば役に立ちます。しかし、これらは、製作・輸送・架設を目的とした専門的な資料の性格があります。管理者側が資料を残さないことも多いのですが、これは業務上の瑕疵には当たりません。逆に言えば、かなりの重要なデータは民間企業側、または個人で保存されていて、それを好意的に利用できることがあります。しかし、いつも可能ではありませんので、改めて再現設計をまとめることも必要になります。この場合、必ずしも元の設計条件に沿った計算書を作成するだけではなく、実情に合うように条件を変えた複数の計算書を作成して比較することも重要です。例えば、非合成の設計仮定で架設された場合であっても、合成作用を考えるとどうなるか、の計算がそうです。非合成桁と合成桁との応力度分布の違いを、図7.2に示します。中立軸の位置が大きく異なります。これらは、できれば、実橋での応力測定をして比較したいところです。エクセルSoftでは、製作や架設の作業に関わる専門的な項目は、意図的に省きました。例えば、添接部の計算や、材料断面寸法を細かく検討すること、などです。ただし、これらの専門的知識は、現物の構造を観察するときに必要です。
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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