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7. 鋼鈑桁橋計算エクセルSoftの解説

7.1 構造の理解


7.1.2 橋梁工学と構造力学と数値計算法とを区別して理解する

 橋梁の設計・製作・架設は、開発と研究に多くの知見が積み上げられてきて、その要点が示方書としてまとめられてきました。設計法の勉強は橋梁工学の勉強であって、示方書の解説を理解することから始めます。その背景を支える応用力学的課題は非常に多いのですが、示方書では学術的な知見を実用的な提案に集約する工夫がされています。理論に忠実な計算方法が提案されているのではありません。また、数値計算法は技術ですので、設計者の個性的な手順と工夫も見られます。手計算の時代の計算法を理解することは必要です。コンピュータを利用する計算が普通になりましたが、プログラムは計算手順そのものをプログラミング言語で記述した文書だからです。コンピュータが利用できなかった時代の計算書は、具体的な数値と、それが得られた計算手順が分るように形式と体裁とを整えてまとめました。橋梁工学の常識であるとして、計算書に載せない省略事項も多くあります。実践的な設計法の勉強は、この隙間を含めて理解しなければなりません。手計算時代の計算書は、隙間を埋める手掛かりを書き残しておくことが普通に行われていました。その方法は、原則として、参考文献に法的な根拠となる準拠示方書を挙げ、必要に応じて条文番号を個別の項目に載せます。構造力学の各種公式の利用は常識の部分ですが、データブックとして、土木学会で編集したハンドブック類を使うことが暗黙の了解事項でした。過去形で言うのは一種の皮肉でして、最新の編集は物知り事典的な内容になっていて、実用データが乏しくなったからです。理論の出所を説明するため、学術論文を参考事項として引用することもありますが、これは迷惑なことも多く、一般には簡単に参照できませんので、付録などの別冊で説明するようにします。計算書は学術レポートではないからです。計算書をコンピュータの利用で作成するようになって、ブラックボックス化と言う省略と、また、必要以上にリストを増やす無駄も増えました。したがって、バランスの取れた計算書をまとめ、それを理解するための技術教育の場が望まれています。 
2009.10 橋梁&都市PROJECT

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