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6. 格子桁の分配係数の計算法

6.2 格子桁の解析モデルと設計モデル


6.2.3 理論から実構造を逆提案しないこと

 数学的方法を駆使して、格子桁および平面状の版の力学的性質を精密に解析することは、多くの理論研究者の興味を刺激しました。静定構造物であれば、構造解析の結果を見て、応力の大小に合わせて個別に部材寸法を変更することができます。しかし、不静定構造物の場合、或る部材の断面寸法を変えると、計算条件が変ってしまい、全体の応力配分も変ります。それを反映するように部材寸法を変えて行くと、最初とは全く違う構造形式の提案になることがあります。格子桁の設計の場合には、次のようなことがあります。複数の主桁を使う格子桁では、耳桁(幅員最外側の主桁)に応力が集中し、相対的に中間の主桁の応力が低く出ます。したがって、耳桁の断面を大きくします。そうすると、さらに耳桁に応力が偏り、中間主桁の応力が下がります。この究極が2主桁橋になり、結果的に中間の主桁断面を床組の縦桁並みに減らし、それを適当な間隔の横桁で支える構造が提案されるようになってしまいます。構造物の設計は、全体の剛度のバランスが必要ですので、理論計算上の応力度が低い場所の材料を省くと全体の安全性が損なわれることも起こります。したがって、理論解析に使うモデルは、実構造の性質を適度に反映する明快さがあると共に、試行錯誤の繰り返し計算に手間が掛からないように工夫します。格子桁の計算を設計に応用するときは、複数の横桁を持つ場合であっても、これを一本横桁の格子に置き換えたモデルで扱います。大胆な仮定のように見えますが、橋全体のマクロの挙動を捉えるモデルとして、実践的な価値があります。 
2009.9 橋梁&都市PROJECT

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