目次ページ,  前ページ,  次ページ

6. 格子桁の分配係数の計算法

6.1 幅の広い道路橋


6.1.3 プレートガーダーの力学的挙動は良く分らないこと

 橋の建設は、なるべく明確な力学モデルを考え、構造力学の計算を元に、部材を構成します。しかし、実際構造を正確にモデル化することができないか、または良く分らないことも多いので、設計では安全側の仮定を採用します。実際のプレートガーダー橋は、有限個数の主桁を、幅員方向に適当な間隔で配置した対傾構と横構でつなぎます。最もマクロに平均化して見ると、スラブを含めて、平面的な直交異方性の弾性版であって、支間方向と幅員方向とで剛性が異なります。プレートガーダーの主桁単独は頼りない部材ですが、全体構成は安定した立体構造になります。しかし、対傾構と横構がどのように働くかについては、良く分りません。プレートガーダーが立体的に安定であることは、全体の組み合わせが結果的に捩れに抵抗しているからであって、主桁単独は殆ど捩れ剛性を持ちません。次善のモデルとして、対傾構の作用を解析するマクロのモデルが、捩れを考えない桁で構成した格子桁構造です。格子構造は、高次の不静定です。理論として考えられても、コンピュータが利用できなかった時代、手の掛かる数値計算が必要でしたので、実務で扱うことを敬遠しました。日本の敗戦(1945)後、ドイツの橋梁技術に多くを学びましたが、その一つが格子桁の計算理論をまとめたレオンハルト(F. Leonhardt; 1909-1999)の論文です。レオンハルトの方法は、主桁方向に離散的なフーリエ解析を応用し、横方向は横桁の自由振動解を応用して重ね合わせる巧妙な方法でした。理論を設計計算に応用するときは、複数の横桁を持つ格子桁全体を、主桁支間中央の一本横桁に抽象化した格子モデルに置き換え、さらに構造形式の提案にまで昇華させました。パソコンが便利に利用できるようになりましたので、高次の不静定構造も数値計算が楽にできるようになりました。一本の分配横桁を使うモデルは設計法が明快ですので、標準的なプレートガーダー橋の計算法の一つとして採用されています。 
2009.9 橋梁&都市PROJECT

前ページ,  次ページ