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5. プレートガーダーの構造

5.5 合成桁断面の応力度計算法


5.5.2 ヤング係数比の考え方

 合成桁断面に作用する曲げモーメントと剪断力とから、鋼部材・コンクリート部材別に応力度を計算するときは、ヤング係数比nを使って、コンクリートの方を鋼断面に換算し、全体を鋼断面として計算をするのが実践的な方法です。鉄筋コンクリート理論では、鋼断面の方をn倍してコンクリート断面扱いをしています。合成桁の理論的モデルを考えるときは、図5.7に示すような単純化した断面形状を仮定し、鋼とコンクリートとを断面積と断面二次モーメントを持つ別部材にしておいて、個別に軸力と曲げモーメントとを求めてから応力度を計算する代数式を提案しました。ドイツの文献がそうなっていましたので、それを真似たのです。しかし、ハンチがあるような、少し複雑な断面の計算には向きません。コンクリートのヤング率は、材齢や応力の状況で種々の顔を持ちますので、場面に応じてnの値を選択するようにして設計計算に利用します。合成桁は、一種の不静定構造物の性格がありますので、架設工法次第で応力分布が変ります。活荷重合成と死活荷重合成の区別がそうです。しかし、架設工事の実際は、先に鋼桁を完成しておいて、それを足場にしてコンクリート部分を打設するのが普通です。また、死活荷重合成になるように努力しても、ある年月を経ると、コンクリートの乾燥収縮やクリープが発現して、応力状態が変ります。この理論的なメカニズムは良く分りませんが、簡単な仮定を使って計算してみると、死荷重分の大部分は鋼桁で持つことになり、結果的に活荷重合成桁と変らないように進行します。設計計算では、途中経過を無視して、最初と最後とだけで結果を合わせるようなモデルを使います。死荷重応力のような持続的な応力が作用している場合は、ヤング率が見かけ上、低下すると捉えます。そして、それを計算式の中で反映させたいとき、ヤング係数比を変えるだけで対応させます。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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