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5. プレートガーダーの構造

5.5 合成桁断面の応力度計算法


5.5.1 品質管理を踏まえることを理解する

 コンクリートは、鋼材と共用して構造用材料として強度に期待して使いたいとき、理想化した弾性体モデルの仮定が必要です。実用の範囲で、応力と歪みとが比例する線形弾性体と仮定することが最も扱い易いので、マクロに扱うときは、ヤング率Ecが一定の均質な弾性材料と置いて、種々の計算に応用します。実用的な数値は、鋼材のヤング率Esとの比である無次元数のヤング係数比、n=Es/Ecに集約します。コンクリートは人工的な石材ですので、施工前に仮定した通りに実際の材料が出来上がるか否かに、常に不安が付きまといます。これを合理的に解決する実践的な技術と理論の総合を品質管理と言います。品質管理の技法は、敗戦後、アメリカ風の合理的な考え方に学んで研究が進んだ分野です。日本では、良い品質とは、個人の職人技に頼るような、山勘や経験の蓄積で解決する問題と見る傾向があります。例えば、練り上げたコンクリートの軟らかさをテストするスランプ試験は、一部の学者は、科学的な根拠のない、いい加減な試験であると軽蔑的に見る傾向があります。しかし、訳の分らない性質を定量的に捉え、その性質を統計的に分析し、そこから得られた目標値に合わせるように全体手順を考え、管理にまで組み立てる発想は、日本的な風土では生まれなかったのです。品質管理を支えるのは、多くの試験や実験の積み重ねに始まります。それらを集約し、単純化した数値にして使います。
2009.8 橋梁&都市PROJECT

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